金の卵 連続ブログ小説 №38

金の卵 連続ブログ小説 №38 

 

 田舎の朝は早い、まだ薄暗い頃から起きて何をしているのか目が覚めたので台所を見ると母が朝飯の支度である。良い臭いは子供の頃から嗅いでいる蒟蒻料理だと直に解った。

蒟蒻は蒟蒻芋から仕込み石灰を使って固めるのである。

蒟蒻は包丁を入れず、手で千切って鍋に入れて料理していた。

由美は旅の疲れか、まだ目覚めないらしい、昨夜は妹達にせがまれて東京の話しを遅くまでしていたらしく、其の儘妹達の部屋で床についた。

清三は由美の事が気になって、寝つきが悪かったが眠る事が出来た。

 由美と妹達が部屋から出て来た。

「おはようございます」と由美が挨拶すると、清三と母はおはようの声を揃えてお辞儀をした。

「おはよう、良く寝むれてよかった」と言葉を掛けた。

母は由美の鼾を聞いていたので、ぐっすり休まれたと思っていた。

由美は妹に連れられて、外へ出て行った。

家の横を山の清水が流れを作っていた、川幅の狭い小川である。

石で堰を作り、川底を掘った小さなダムのような所に案内された。

其の冷たい水で顔を洗うのだと言う。

由美は始めての経験に子供のように、はしゃぎながら気持ちが良いと何度も顔を擦っていた。

其の水は飲む事も出来て、夏はスイカや果物を冷やし、洗い物をしていた。

今は屋内の井戸水を飲料水にしていて、外は洗濯や農機具の洗浄に利用している。

川底を見ると小さな魚が泳いでいる。メダカより大きい魚で雑魚である。

 御飯出来たから早く家に入るようにと外まで聞こえる大きな声に、皆急ぎ足で帰って来た。

                    つづく