金の卵 連続ブログ小説 №35

金の卵 連続ブログ小説 №35

 

 家の間口は十八間有ると言う大きな家だった。

玄関を入ると広い土間といろりがありつづきにお勝手が有り傍らに手押し式ポンプの井戸が屋内にあった。

土間の広いのは農産物を置く為と作業をするのに広くとってある。

その広さに、由美は驚いた。

背戸は柿木、栃の木、竹を防風用として植えてあった。

座敷に通されて挨拶を交わした。

由美の母は東京でお客さん相手の商売人の為かお母さんと言うより「あねご」の様な感じがしていた。

しかし、清三の母は見るからに「おかあさん」と言う感じだった。

由美はすっかり気に入りお母さんの子供になりたいと思った。

清三の母は由美を見て初対面とは思えず、何処かに預けた家の子が帰って来たような気がしていた。

 昼御飯は餅を食べる事になった。親戚や隣近所の人が集まり餅つき大会である。

前日から水に浸したもち米を蒸篭でふかし、栃の木で出来た臼に入れ杵で搗くと、搗きたての柔らかい餅が出来た。餅を食べ易い大きさに手で切って台の上に乗せる。

食べ方が色々有るので驚いた。

粒餡、きな粉、納豆、砂糖醤油、大根おろし、枝豆から作る餡

一番驚いたのが納豆である。その納豆も自家製で臭いが強く蜘蛛に負けないくらいの糸を引く、その納豆が美味しいのである。

考えて見れば御飯に納豆をのせて食べる、餅にのせて食べる、何の不思議は無いが初めての経験に由美は戸惑ったが、食べたら美味しい好物の一つになってしまった。

粒餡は自分で餅を平らにして餡を包んで大福餅を作るのであるが、これが楽しい。

きな粉は安倍川餅で食べた事を思い出した。

枝豆の餡は東北地方の名物で「ずんだ餅」と言う。

大根おろしで食べると消化を助ける作用が有り、たくさん食べる事が出来た。

搗き立て餅を食べる、稗、きび、桜海老、海苔、栃の実、等次々と搗いていた。

 餅を搗き終ると、各家庭別に分けて餅つき大会もお開きである。

                    つづく