金の卵 連続ブログ小説 №13
金の卵 連続ブログ小説 №13
店に入ると、両側に色々な服装をした女性が五十人程並んで深々と頭をさげて「いらっしゃいませ」と声を揃えて挨拶をする。
その光景に清三は吃驚、ミラーボールの光りが店内を廻りながら照らしている。店内は薄暗く七色の光りと店内のアナウンスで異様な雰囲気の中、席に付いた。
初めて見る水商売の女性、衣装もスタイルも良く色気が有り夢の様な光景だった。
「いらっしゃいませ」とボーイが来て「ご氏名は」と聞いてくる。
「由美さんを頼みます」と先輩は頼んだ。
清三は驚いて「ゆたか」食堂の由美を思い出していた。
「ごめんなさい由美は先週辞めました」との返事
先輩は「それでは指名無しでお願いします」と伝えた。
暫らくすると、白いロングドレスを着た背の高いほっそりした女性が現れた。
「有難う御座います」と頭をあげて笑顔をふりまいて話し出した。
「あら、フーさん元気にしていたご無沙汰なので心配していた所なのよ」
と甘い声と言い回しに清三は背筋の寒くなるのを感じた。
フーさんとは先輩、藤田さんのことであった。
ホステスはこの店のママで水商売の業界では有名な人物である。
ママは清三の横に座り身体を寄せて笑顔をふりまいた。
「フーさん、この男前紹介してくれる」と鼻に掛かった声で囁いた。
「彼は我が社の若手ホープの佐藤清三君です」
「宜しく」と清三は会釈した。
ママは清三の腕を胸元に抱き締めた。
「素晴らしい筋肉ね、逞しい身体」と力を入れて腕を改めて抱き締めた。
「誘惑したくなったわ」
清三は抱き締められた腕が豊満な胸に埋まるのを感じながら、その柔らかい感触に酔った。
ママの体温が白いドレスを伝わって腕に来るまで感じていた。
店内のアナウンスでママが呼び出され席を離れた。
もう一人の先輩梅田が清三と話し出した。
「東京のおねえちゃんは怖いよ、誘惑に気つけろよ」
東京は生き馬の目を抜くとか、尻毛迄も抜かれると昔から言われていた。
「いらっしゃいませ」とチャイナドレスとミニスカートで真っ赤なブラウスを着た二人が
ヘルプとして席についた。
「フーさんと梅ちゃんお久しぶり、元気でした他店で浮気してたでしよう何で指名してくれないのよ」
指名しないのに理由があった。
この店の名は「ハーレム」と言って、指名しなければ次々とヘルプが来て相手してくれる。
安サラリーマンでも充分楽しめる格安の店で人気がある。
今日指名した由美はヘルプでついたがもう一度逢いたいと思った一人であった。
店内アナウンスは、ホステスの名前を独特な節回しで呼び、テーブルナンバーを告げて指名である事もアナウンスする。
ホステスは指名がないとお金にはならない、ヘルプの時いかにお客さんのお気に入りになるかが勝負である。
事務所には成績グラフ表が張り出され、成績の悪い人は教育されると言う。
夜の女性世界、お客さんの前では笑顔が売り物でも裏の顔は厳しく女の戦場である。
清三はお手洗いの場所をホステスに聞き席をたった。
用を済まして出てくるとママが待っていた。
「どうぞ」とおしぼりを差し出した。
普通おしぼりは係りの者かヘルプが差し出すが、初めてのお客さんでお気に入りの人にはママが必ず迎えに来る。
清三におしぼりを渡すのにはもう一つの訳があった。
「今度電話してくれる何時でも構わないから」と名刺を渡された。
つづく