金の卵 連続ブログ小説 №9

金の卵 連続ブログ小説 №9

夏休みに入り授業が無いのでクラブ活動で汗を流した。

中学のクラブ活動よりレベルが高く驚いた。

先輩の指導で上達するのが自分でもわかるような気がした。

夏休みも終わり二学期に入ると社長の奥様が病の床に就いた。

症状は疲れから来る病で暫らくの静養が必要になった。

家に居ては身体が休まらないので姉の住む金沢文庫の家にお世話になる事にした。

奥様が居ないと男所帯で何かと不便であるが社長はマメな人で主婦に負けない位家事をした。

暫らくしてお手伝いさんを雇って楽になった。

佐藤清三は学校が終わると近くの大衆食堂で夕食を取る事にした。

その食堂は「ゆたか食堂」と言い勤労学生の為に学割定食のメニューが有り学生には人気があった。

味も良く、量が有り若者には喜ばれたと共に美人の二人姉妹が店員をしている。

清三は姉妹に会った時、何故か毎日でも来たい気持ちになった。

 「ゆたか食堂」は主人が戦死した後、奥様が引き継いで営業している。

姉は調理を手伝い、店員も兼ねて、家族だけで商売している何処にでもある小さな食堂である。

女主人は街で評判の美人であり、娘二人も母親に似て美人である。

色白で愛嬌があり、笑顔が親子とも素晴らしく、食べ物迄おいしいのだから人気が有って当然である。

しかし、似なくて良い事迄そっくりなのは声である。

調理場で学割定食一丁あがりの声に男性が居るのではと思う事もある。

姉妹は背格好から顔まで良く似ている。

二女由美は昼間高校生夕方店が忙しい時手伝っている。

親子三人で暮らすのには家族の協力があればこそ成り立つのである。

清三は定食を食べ終わると由美に向かってお茶下さいと小声で頼んだ。

「はい」と顔に似合わぬ声を出して笑顔で近づいて来た。

その笑顔を見ていると何か胸の奥が変な気持ちになってきた。

 茶碗は良く見る青色に白の水玉模様、その茶碗にお茶を入れている。

急須を右手に持ち左手でそっと蓋を押さえてお茶を注いでくれた。

その手の綺麗な事、色が白く、指は細くこの手を白魚のような手と表現するのだろうか。

色白の皮膚から透けて見える血管、暫らく見詰めていた。

ふと気が着き茶碗を持とうとすると同じく由美は茶碗を押して清三の前に差し出すのと同時になり、由美の指に触れてしまった。

二人は顔を見合わせて由美は微笑んだ。

その微笑に虜になった清三は由美の顔を見詰めた。

「どうしたの、私の顔に何か付いている」と、由美が話し掛ると清三は赤面して俯いた。

由美の髪はオカッパ頭、髪が揺れて時々見える襟足の綺麗な事、その肌は何と表現したら良いのか迷った、そうだ赤ちゃんの肌に似ている感じがした。

瞼は奥二重、瞳は黒、白目の部分は純白で穢れを知らない乙女其の者であった。

奥二重で丸々目なので、何時も潤んだような眼差しに成っていた。

鼻は高からず低からず、ちょっと上向きで、その分ちょっとたれ目である。

口元は笑顔の時、唇が素晴らしい形を作り笑顔が倍増する。

その唇の間に見える宝石のような光った歯、上二本が特に魅力に感じた。

清三はまともに由美の顔は見られなくも、ちらちらと横目で観察していた。

由美は一つ年下の清三を弟のように思い出した。

由美の友達が弟に交わす言葉をふざけて使ってはなし、ちゃめっ気を見せてきた。

 何時しか由美は清三の名を「せいさん」と呼ぶようになり、清三は由美の事を「ミーちゃん」と呼ぶようになっていた。

                   つづく