金の卵 連続ブログ小説 №4

金の卵 連続ブログ小説 №4 

 

上野駅に着いた少年少女達は就職指導の先生から出迎えに来た会社の人に渡された。

夜行列車で一睡もできず、目を腫らした者、ぐっすり眠れたのか頬に何かに押されたような跡が付いている者も居た。

それぞれ、大きな荷物を持って学生服の儘で先生と別れを惜しんでいた。

泣き出す者、先生に両肩を持たれ「泣いたら駄目だ、先生も別れは辛い、しっかり働いて笑顔で又逢おう」の言葉に泣き声が大きくなっていった。

この別れは卒業式の日とは大分違っていた。

俯いて、時々振り返り雑踏の中に消えていく子供達を見送る先生は身体に気を付けてがんばれと祈っていた。

昨年までは故郷の駅で見送るだけであったが今年は同行しなければ成らない事情があった。

 就職指導の関田先生は卒業生佐藤清三を連れて、就職先の会社まで行った。

会社は都電三ノ輪車庫の近くに有り、住宅街の中に在った。

余り、大きな会社ではない、見るからに町工場と言う外観だった。

先生は佐藤にこの会社を薦めた訳が三つあつた。

社長さんと同郷であり、定時制高校に行けて社長家族と共に生活が出来る。

寮生活と言うより下宿である。

会社名は三ノ輪板金有限会社 社長板倉金三 工員四名佐藤が入社し五名である。

工員二名は既婚者、二名は寮生活そして佐藤は定時制高校を卒業するまでは社長宅での生活である。

佐藤清三は成績良く有名な高校も合格する実力の持ち主だが家庭の事情で就職せざるを得なかった。