金の卵 連続ブログ小説 №42
金の卵 連続ブログ小説 №42
「ゆたか食堂」の都市開発による移転問題の話である。
当初、一階に外資系レストランが入る予定だったが、地元商店を優先する様に変更された。
それに伴い、ビル設計を変更する事になった。
一階店舗、二階は住居にする店舗付き住宅にして、開発で消える商店街、形を変えて残す事になり、その一角にゆたか食堂が入る事が出来たのである。
ゆたか食堂が三ノ輪に残る事を聞いた清三は由美に何時でも逢える事ができると心の中で喜んだが、其の反面麗子の事が気になって複雑な思いだった。
由美は清三に待っているから何時でも遊びに来てね、と満面の笑みを浮かべて席を立った。
清三は荷物を持って由美の先を歩き、お勘定を済まして外に出た。
「用事が有るから此処でさよならするよ」
「そう、楽しかったわ、では又逢おうね、バイバイ」
時々振り返って笑顔で手を振る由美の顔が遠ざかるにつれ寂しい表情に変わるのが見えた。
地下道の入り口に吸い込まれるように姿が見えなくなってから清三は明日から生活するアパートを訪ねた。
つづく