金の卵 連続ブログ小説 №39
金の卵 連続ブログ小説 №39
いろり端の傍らに丸型の卓袱台が二台置いてあり上には昨夜と違う食事が並んでいた。
いろりには鉄鍋に味噌汁が掛かっている。味噌は自家製である。
味噌は各家庭で仕込んでいるので、各家庭で味が様々である。
しかし、醤油はしこみが大掛かりなので、隣近所の共同作業で作り分け合う為同じ味であると言う。味噌と醤油はカビが大敵である。
防腐剤は使用して無いので、常にかき回して置くと効果が有ると言う。
どんな食べ物でも保管が大切なので先人達の知恵を引き継いで生活している。
由美は戴きますと自家製の納豆を御飯の上に載せて食べ始めた。
納豆も美味しいが、御飯が最高に美味しい、今まで食べた事の無い美味しさに思わず何でこんなに美味しいのですかと御飯を噛みながら尋ねた。
御飯の美味しいのは、品種コシヒカリを自家用に生産した物である。
米生産農家は収穫した米は国に供出し収入を得て生活費になるので、味は落ちても収穫が多い品種を選ぶが土壌によって偏る為、味は様々であった。
美味しいお米は収穫量が少ない為、当然収入が少なくなる為、生産量の多い品種を選ぶのは当然である。
自家用米の生産は代々引き継いでいる種籾で収穫した後又種籾として一部を保管しているのである。
低農薬で丹念に手入れして稲を育てるには大変な苦労があると言う。
他の田は農薬を多めに使い生産しているが、その為かイナゴが少なくなった。
清三が子供の頃イナゴ獲りに行くとたくさん獲って来て食べたものである。
獲り方は袋の先に竹筒を付けて置きイナゴを手で獲って竹筒に入れると袋の中に入り逃げる事は出来ない、家に帰ると母が釜で水を沸騰させて、袋のまま釜に入れて湯がき、取り出して冷やし羽を取り料理するのである。
今は獲る事ができない懐かしい思い出である。
話を聞きながら由美はお替りをした、この美味しさはおかずが無くも何杯も食べられるような気がしながら箸を置いた。
由美は都会の人たちに美味しい蒟蒻や御飯をゆたか食堂で食べさせたいと思った。
つづく