金の卵 連続ブログ小説 №49
金の卵 連続ブログ小説 №49
料理も食べ終わり帰ることになったので、麗子がレジの前に立ち支払いをしている間に清三は表に出ると、若い二人連れの男が清三の身体に当たって来た。
「気をつけろ、このやろう」と大きな声で清三に因縁をつけて来た。
清三は落ち着いた態度で「すみません」と小声で答えたが、考えてみれば向こうから当たって来て、因縁を付けてきた、とりあえず誤れば事が大きくなる事も無く済むと思ったのだった。
しかし、「このやろう」と清三の胸倉を掴んできた。
「何をする」と胸倉を掴んだ腕を捻り上げると、もう一人が右から突進してきたが、清三は体を交わしながら、足払いで相手を倒した。
「何しているの」と麗子の大きな声が聞こえた。
「この二人に絡まれて困っている」と答えると、麗子はその若者に向かって叫んだ。
「松ちゃん、竹ちゃん、如何したの、その人私の連れなのよ」
若い二人は揃って「姐さん済みません」と頭を下げてたちすくんでいた。
麗子は二人を誘ってオイル焼きの隣の喫茶店に入った。
座席に着くと麗子は何を飲むかと尋ね、松ちゃん、竹ちゃんお腹空いてない、と尋ねた、すると二人は御馳走様と答えたのでメニューを渡した。
二人はカツサンドとコーヒーを麗子と清三はコーヒーを注文した。
麗子は笑顔で「二人に紹介しておくわ」と清三を紹介した。よろしくお願いします。と
互いに頭を下げたが、直に頭を上げ「もしかして東北」と同時に言葉が出た。
挨拶の中でお国言葉のアクセントは耳が覚えていた。
つづく
金の卵 連続ブログ小説 №48
金の卵 連続ブログ小説 №48
暫らくして麗子が来る。
「ごめんなさいね、待たしてしまって」
「いや、どうもないです」
「やっと、決心して私の処に来てくれて有難う」
「いや、こちらこそ感謝しています」と頭を下げながら、今日は車の事まで世話に成ってしまった事のお礼を延べながら、又頭を下げた。
「失礼します」と障子戸が開くと大皿に載った料理が運ばれてきた。
食べたことが無い大きな肉に野菜、見るからに美味しそうである。
鉄板が温まると、油身をのせて溶け出すと一面に塗り広げられ肉が載せられた。
コップにビールを注ぎ乾杯して、一気に飲み干した美味しさが喉を刺激し、胃袋におさまるのが解る。
何時もは、食堂で飲むビールは注文すると作る言わばインスタントビールである。
インスタントビールはどのようにして作るのか知らないが、値段は半額でもアルコールは強いらしく良い気持ちになるので時々飲んだ事があった。
鉄板の上の肉が小さな音を立てて焼けてくる、周りに野菜が載せてある。
「もう、食べられるからお食べ」麗子の言葉に清三は「戴きます」と箸を持ち食べだした。
「食べながらで、いいから聞いておいてほしい」
「ハイと言いながら、肉を取りタレをつけて口に入れた」
「明日から店に入ってもらうが、店長の指導を受け早く一人前になって店を持って欲しいと思っている、目標は三年がんばって下さい」
「ハイ、解りました努力いたします」
「一つだけ、必ず守って欲しい事があるの、若さの捌け口を女性に求めるのは仕方ないが店の女性だけは手を出さないで。商品ですから、解りましたか」
清三は解りましたと、返事はしたが余り真剣には受け止めていなかった事が後に成って解るのであった。
つづく
金の卵 連続ブログ小説 №47
金の卵 連続ブログ小説 №47
アパートに着いた清三は、最後の後片付けも終わり、明朝の出発を待つばかりである。
何故か、寝つきが悪い、就職夜行列車の時も眠れなかったが、今夜は今まで住んで寝ていた部屋、其れなのに、いろいろな事を考えてしまう。
気が付くと、外が明らんで来たのを見て眠りに入った。
目覚めると、太陽がのぼり、雲一つ無い青空が広がっていた。
会社に行き社長や社員の方たちに挨拶して、アパートに戻り荷物運搬の車を待っている。
車は麗子の知人で八百屋を経営している主人が気持ち良く運転手付きで貸してくれた。
暫らくして、車が来たダットサン・トラックである。
荷台に整理タンスと洋服タンス蒲団を積み、他の細かい物を積むと荷台に一杯になる。
ロープを掛けて、清三は助手席に乗り出発した。
転居先のアパートに着き、荷物を部屋の中に押し込んだ儘で麗子の所に急いだ。
麗子に上野駅近くのオイル焼店に来るように言われていた清三は約束した時間よりも早く着いたので、店の近くをぶらぶらして時間を過ごし少し早いが店に入った。
ハーレムのママは来ていますかと店員に訪ねると店員は「少し遅くなると連絡がありました。どうぞ、こちらえ」と案内された席には予約席と書いたピラミット形の置物が中央に置かれていた。
店内を見るとまだ客数は少なく静かだった。
予約席は奥の個室、障子を閉めると一層静まりかえっていた。
清三は初めてのオイル焼きにどんな料理が出てくるか楽しみにしながら、いろいろ想像したが結論が出る筈もなかったが考えるだけでも楽しいものであると感じた。
つづく
金の卵 連続ブログ小説 №46
金の卵 連続ブログ小説 №46
「いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」
初めての体験に戸惑いながら、トルコ嬢の指示に従った。
シャツのボタンまで外して衣服を脱がしてくれて、えもん掛に掛けてドアーの上にある釘に掛けた。
ドアー上部にある透明のガラス窓が見えなくなった。
個室から外が見えなくなったと言う事は外からの監視窓が役に立たない、それを、承知の行いとしか、思えなかった。
浴室に入ると木箱の中に入り首だけ出して入るスチーム風呂、これがトルコ風呂である。
暫らくすると、汗ばんできたのを見て、お背中流しますと、箱の扉を開けて、さあ、どうぞと洗い場を手の平で案内された。
バスローブを脱ぎこれ以上肌は隠せないと、言わんばかりの水着姿を清三はチラッと見たが、視線に困り俯いていた。
女性は背中を流し出して、「お客さん寒いの」と話しかけた。
「いいえ」と返事をするのが精一杯、個室に入った時から体の間接が震えて止まらないのにきづかれてしまった。特に足ががたがたどうしても止まらない。
「お客さん初めてでしょう、何でこんな処に来たのですか」
「ハイ、社会勉強だと、先輩に連れられて来ました」
女性の水着姿はプールや海で見ていたが、こんな強烈な姿は始めてである、色白で肌の綺麗な全裸に近い姿は芸術的美観であった。
「お客さん、彼方の様な方はこんな処に来てはいけませんよ」と説教染みた言葉に戸惑いを感じた。
「お客さん、前を向いて」と言われて、女性と向かいあった。
豊満な胸も綺麗な肌で一層輝いて見え、こんな近くに有ると触れて見たい気持ちが起きるが、先輩の言葉を思い出した。
理性を失っては成らない、基本サービス以外は受けては成らないを守る事が出来た。
指の先から全身洗ってから浴槽に浸かり風呂からあがった。
肌触りの良いバスタオルで軽く叩くように全身を拭いてくれて、下着から衣服まで着せて
「若いていいね、元気で」とお尻を叩きながら「絶対こんな処へ二度と来ては駄目よ」と
ドアーを開け「有難うございました」と、清三を通路に出した。
女性は個室で待機しているらしく、出口までは送ってこなかった。
数日過ぎてから、店を訪ねて、ご指名はと聞かれ「小雪」と答える、すると、小雪は辞めましたの返事だったので、店には入らず帰って来た思い出があった。
つづく