金の卵 連続ブログ

 金の卵 

はしがき

 昭和二十九年四月五日集団就職列車第一号が、金の卵を乗せて故郷を後にした。

何時も家の庭先で見ていた列車に乗り車窓から見る我が家は修学旅行以来二度目である。やがて列車はトンネルに入り煙と臭いが車内に漂う、薄暗いトンネルは此れから行く道を暗示するかのように不安と寂しさが込み上げてくる。

都会の荒波に揉まれ転落して行く少年少女、その荒波の大海原からは灯台が見えない。只、見えるのは原色のネオンの暖かみが無い光りだけだった。

日本の経済成長の原動力になった金の卵達が定年を迎えマスコミは団塊の時代と報じる。団塊とは辞書を引くと「かたまり」とある。

「かたまり」の四文字以外に言葉は見つからなかったのだろうか。