金の卵 連続ブログ小説 №41

金の卵 連続ブログ小説 №41

 

見知らぬ駅に列車が止まるが、ホームは灯り一つ無い真っ暗闇で、停車と同時に車内も真っ暗になり、物音も無く静寂な空気が漂っていたが、発車のベルも無く動き出した。

連結器の摩擦音も無く、レールの継ぎ目を通過する車輪の音も無い。

暫らくするとホームに灯りが点く、列車がホームを通過すると車内も明るくなった。

一人の女性が車内に入ってくる、一見水商売風の女性と解るような派手な衣装に厚化粧ではあるが、目鼻立ちの整った美人である。

清三の前に来て「ごめんなさい」と席に座った。

人のけはいに目を覚ました清三は吃驚、座席から飛び上がった。

その時前席にいたお客さんの足を蹴ってしまったのであるが、由美に詳しく話しのできる夢で無いと清三は解っているだけに嘘をついた。

夢に出てきた女性は麗子であった。

麗子は視線を由美に向け、微笑みながら暫らく見詰めてから、視線が清三に向けられた。

その顔に微笑みはなく、鋭い視線が清三の瞳に突き刺さった。

その顔と視線は恐怖を感じる位の形相に吃驚して飛び上がったのであった。

その夢を思い出しながら将来の事等いろいろ考えながら、車窓からの都会の景色を見ていると由美が声をかけた。

「せいさん何を考えているの、もう上野駅よ」

其の声に驚いたように立ち上がり網棚の荷物を降ろし、黙って由美に渡した。

「せいさん、疲れたの」

しかし、清三は「いや、別に」としか答えなかった。

 改札を出た二人は駅構内の喫茶店に入り休憩することにした。

清三はミックスサンドとコーヒー、由美はミックスジュウスを注文して暫らく待った。

夜行列車の疲れが出たのか、会話が余り無い儘、時間が過ぎていった。

注文の品が来て、ミックスサンドを二人は食べ始める、暫らくすると二人は生き返った

ように笑顔になり会話が弾みだした。

考えて見ると昨晩夕食らしき食事をしなかったので、空腹だったのに違いない。

由美は「せいさんに未だ話してない事がある」と切りだした。

                    つづく