金の卵 連続ブログ小説 №28

金の卵 連続ブログ小説 №28

 

 麗子は貴の身の上話を夢中で夜の更けるのも忘れて聞いていた。

外は石神井公園石神井池三宝寺池の水面が波も無く光りだしていた。

海辺では無いが朝凪状態である。

「麗子さん長い事話を聞いてくれて有難う」

貴は眠たい目を無理に大きく開けて左手で口を押さえて欠伸をしてから

「このような俺だが、結婚してくれないか」の求婚に心の中では、私のような者で宜しければお引き受けいたしますと返事は決まっていたが口からは出せなかった。

「私には勿体無い話、貴さんを幸せに出来るだろうか」

「俺を幸せにするのではなく、俺が麗子さんを幸せにする自信がある」

二人は結婚を前提に交際する事になった。

話がまとまると急に眠気が差してきて、貴は二階の寝室へ麗子は一階の客間で休む事になった。

麗子は寝床に入ると眠気が醒めて、いろいろな事を考えると眠れなくなってしまった。

何故求婚された時、素直に返事が出来なかったのだろうか、もし良い返事をしていたら

一人寂しく寝なくとも貴さんの寝床を共に出来たかも知れない。

そんな、ことを考えているうち深い眠りに就いた。

 一眠りすると、物音に目が覚めた。音はキッチンの方角、行って見ると家政婦の花江が食事の支度をしていた。

「お早う御座います」と麗子が来た。

「御免ね、起こしてしまったみたい、気にしないで休んでいて下さい」

「ぐっすり寝たので大丈夫です」と麗子は言うが目の腫れが寝不足と解る。

「貴さん何時もお客さん多いのですか」と麗子は問いかけた。

「何時もお客さんは多いけど、男性客ばかりです、女性の方も見られますが、麗子さんのように女性一人は始めてです」

「あら、そうですか」と不思議そうに食堂の天井やら壁を見ていた。

「社長さんは麗子さんがお気に入りなのでしょうね」

「あら、恥ずかしい、でも、本当なら嬉しいわ」麗子はすっかり目覚めた笑顔をみせた。

「おはよう」と目を擦りながら貴が食堂に入ってきた。

                    つづく