金の卵 連続ブログ小説 №7

金の卵 連続ブログ小説 №7 

 

馴れないふとんと枕、ガラス窓に映る色々な光、騒音、車が通ると地震かと思う振動に熟睡出来ず故郷の事、思い出し朝を迎えた。

朝食は社長家族と寮生活の二人と一緒、田舎の食事と違い見た事の無いような料理が朝から並んでいた。

食糧難とは言えお金さえあれば何でも買える時代に成りつつあった。

社長は清三に遠慮しないでたくさん食べて身体を作らねば大人に成れないぞと言われた。

しかし、昨夜の寝不足が原因なのか食欲が無かった。

 清三は身体が小さく内気で男らしくなく、女の子と間違われる事もあった。

それを心配した先生が付き添ってきたが、思ったより確りしていたので安心して帰ったのである。

食事が終わると作業服に着替え工場へ行く、服が大きいのか清三が小さいのか、作業服が歩いているように見え思わず皆笑い出した。

清三は何で皆笑っているのかわからなかった。

 場内に入り驚いたのは、見たことの無い機械、天井から下がっているベルト、そのベルトが大きな機械を回している。

モーターの音機械の廻る音、その騒音に先輩の声は負けていなかった。

「今日は工具の名前を覚えて貰う」と工具箱を前に置き説明を始めた。

これがスパナ、ペンチ、プライヤー、ドライバー、と手に持って説明したくれた。

工具名は故郷で父に教えてもらった事があるので直にわかった。

ところが聞いた事の無い名前が出てくる。

先輩は自分の経験を交えて教えてくれた。

これはモンキーと右手に持ち西部劇に出てくる拳銃の用に回して見せた。

工具は見事に一回転して手の中に納まった。

先輩が見習いのとき「モンキーを持って来い」と言われ、「モンキーは何処に居るのですか」と聞いて大笑いされた話をしてくれた。

各職業には隠語が使われている。モンキーも隠語の一つである。

モンキー即ちモンキーレンチのことである。

パイプレンチの名を「パイレン」と言たり、五キログラムのハンマーを「ゴキハン」と言うのである。

初仕事も定時制高校へ登校する為早退した。

                    つづく