金の卵 連続ブログ小説 №3

金の卵 連続ブログ小説 №3

 

ホームには一人の少女が左手にハンカチを持ち佇んでいた。

九年間一緒に通学した友達、佐藤清三を見送っていた 弘ちゃんであった。

 窓際に座り車窓から見える故郷の景色に胸が熱くなるのを感じた。

いつも家から列車を見ているが、列車から見る我が家は修学旅行以来2度目である。

弘ちゃんと一緒に通学した分校は列車がトンネルに入るので見えない

やがて列車はトンネル内に入り、薄暗い車内に機関車から出る煙と匂いが漂ってきた。

やがて列車はトンネルを出ると村道を挟んで小学校と中学校の生け垣がきれいに見えた。

生垣に沿って櫻木が学校を囲むように植えてある。昨年修学旅行の時満開の桜が脳裏に焼き付いているが、今日は見ることはできなかった。

 列車の車輪はレールの継ぎ目を通過するときの音を規則正しく伝えて、列車は速度を上げていった。暫くすると近くに見えた稜線も遠くに見えるようになり、田畑が広がっていた。暫くすると綺麗な夕焼け空に稜線がはっきりとみえたが、やがて見えなくなり遠くに民家の明かりが見える夜の景色になった。

暗黒の中列車は東京へ向かって速度を上げていた。

                    つづく